アルプス下ろしの吹き降ろす広大な北アルプスの麓、安曇野。おいしいりんごの栽培の条件は、日照時間の長さと昼夜の寒暖の差、そして石を多く含む土壌だと言われています。安曇野三郷小倉地区は、これらの条件をすべて満たしています。養蚕が中心だった当地の農業は、繊維工業の衰退によって1960年代にりんごに切り替わり、わが家でも桑畑だったところにりんごの苗木を植えました。

私が親からりんご園を引き継いだ1980年頃は、農薬や化学肥料はもちろん、畑に草が生えないように除草剤もきちんと使うようにとの指導でした。私は、かけがえのない自然環境を大切にしたいという思いが強く、除草剤や化学肥料を一切使わず、農薬の使用も最小限にして、出来る限り土壌の生態系に配慮したりんごの栽培に取り組むことにしました。

農園を視察に来た指導員から「こんなに草だらけにしておけばよいりんごはとれない」と言われました。私は、自然の樹木は草の中から大木に成長するのだから、もっと自然の力を信じてもよいのではないかと思い、そのまま栽培を続けました。病害虫が園内に蔓延しそうになったこともありましたが、それでもりんごの木はたくさんのおいしい実をつけてくれるようになりました。甘みの強い、味の濃いりんごにするために、色つきをよくするための葉つみは控えめにして、葉っぱによる光合成を十分に行わせ、完熟するまでゆっくりと木の上にならせておきます。自然の味覚を存分に味わっていただけるものと信じております。